BMWの新型X1がFFになった理由:SUVに走りは求められてないの?
2015/07/03
BMWが新型SUV「X1」のフルモデルチェンジを発表しました。初代X1はBMWの伝統にならってFRでしたが、2代目となる新型X1は2シリーズ グランツアラー/アクティブツアラーに続いてFFの採用となりました。
X1のポジション
BMWは2000年代に入ってからSUVラインナップの拡充に力を入れています。すでにX1, X3, X4, X5, X6と大小5車種が投入されました。X1, X3は3シリーズ、X5は5シリーズとプラットフォームを共有しています。さらに、X4はX3から、X6はX5から派生したクーペスタイルのSUVです。
X3は全幅が1,880mmもあって日本での取り回しに苦労しますが、X1は1,820mmなのでまだマシですね。ちなみに3シリーズは1,810mm、5シリーズでも1,860mmなので、プラットフォーム共有といえどもSUVらしくするために大柄になっていますね。
新型X1のスペック
新型X1 |
初代X1 |
2シリーズ グランツアラー |
|
---|---|---|---|
全長 | 4,439 mm | 4,454 mm | 4,565 mm |
全幅 | 1,821 mm | 1,798 mm | 1,800 mm |
全高 | 1,612 mm | 1,545 mm | 1,645 mm |
ホイールベース | 2,670 mm | 2,760 mm | 2,780 mm |
駆動方式 | FF | FR | FF |
幅がやや大きく、全高がだいぶ高くなりました。全高は初代がギリギリ1,550mm以内で日本の多くの立体駐車場に対応していましたが、新型は1,612mmなので立体駐車場は不可ですね。日本仕様がこのままの大きさで入ってくるとは限りませんが。
一方全長は少し縮まり、ホイールベースは90mm短縮されました。
なんでFFになってしまったのか
BMWの信念がどうのというより、客が求めているからでしょうね。
セダンやステーションワゴンでなく、SUVやミニバンを購入する人は車内の広さを求めているでしょう。しかし日本のような道路事情の国では車体サイズを安易に大きくすると、狭い道や駐車場で苦労することになります。小さい車体で広い車内という相反する要求を満たさなくてはいけません。
車内サイズを広くとるためにFFは有利です。動力源、駆動系、操舵をすべてフロントに集約できるので、室内に構造物がめり込むことはありません。FRだと駆動力を後輪に伝えるための構造物が車室底部に必要なため、車内はどうしてもやや狭くなってしまいます。車体サイズがよりシビアな国産ミニバンでは、FRは淘汰されてFF/4WDのみになってしまいました。
先に登場したBMWのミニバン、「2シリーズ グランツアラー/アクティブツアラー」はまさしくその理由でFFを採用しました。詳しくはこちらの記事をご覧ください → BMWのミニバンは日本で売れるのか?アルファードと比較して見えたミニバンの未来
SUVで走りは重視されない?
上(スーパーカー)から下(軽)まで時代はSUV に書いたように、世界的にSUVが人気です。各車こぞってSUVを投入してきていますね。日本メーカーではマツダがCX-5の人気を背景に特に力を入れています。
SUVは、ざっくり言えば「車高が高い」「タイヤもでかい」「4輪駆動」「ゴツい見た目」「2ボックスの3/5ドア」に当てはまる車ですが、必ずしも全部を満たしているとは限りません。「どこにでも行けそうだけど本気の未舗装ガタガタ道は無理」というタイプの車です。
つまり、見た目ありきのクルマであって、ツーリングカーとしての高速安定走行性能も、オフロード車のような未舗装路走破性能も必須ではないということです。乱暴な言い方をすれば、見た目がゴツけりゃいいんです。舗装路の走行性能だけを考えれば、あんな車高にせずにセダンやハッチバックの方がいいでしょう。
SUVを選ぶ人は「広い方がいいけど、ミニバンみたいな箱形よりカッコいいのがいい」というクルマ選びをしているのだと思います。その選び方が正しいかどうかはさておき、そのような選び方をする人に「重心が低い方が操縦安定性が…」とか「FFよりFRの方がコーナリング性能が…」とか言っても暖簾に腕押しでしょう。
SUVを買いたい客 vs FRにこだわるメーカー
客「なんでこのクルマ車体大きいのに狭いの?」
営業「他社と違ってFRを採用しているのでセンタートンネルが……」
客「FRって何?なんでそれにする必要があるの?もっと広くしてよ」
BMWのSUVを選ぶ人が皆こうなわけではないでしょうが、あれだけFRにこだわってきたBMWすらもFFを採用するということは、走行性能より車室の広さを求める人が多いことの現れなのでしょうね。