新燃費測定法WLTPのクラス基準「PMR」って何?どう計算するの?
2017/01/29
JC08に変わる新しい燃費測定法「WLTP」では、「PMR」によって測定内容が変わるそうです。
「PMR」って一体何なのでしょうか? 計算方法をご紹介します。
目次
燃費測定法「WLTP」
WLTPとは、「Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure」の略で、現行のJC08に代わる新しい燃費測定方法です。日本国内のみの基準だった「JC08モード」と異なり、WLTPは世界中で同じ燃費基準が使われることになります。
JC08からWLTPへの切り替えは2018年10月を予定しています。
PMRによる分類
WLTPでは、PMRという値と最高速度によって測定内容が変わります。
この「PMR」とは、出力と車両重量の比「Power to Mass Ratio」を指します。計算方法は以下の通りです。
PMR[W/kg] = 最高出力[W] ÷ 車両重量[kg]
一般的にはPMRが大きいほど高性能だと言えます。
PWR とは異なる
PMRより一般的に使われる値としてPWR(=Power Weight Ratio)、パワーウエイトレシオがあります。PWRとPMRは計算方法が異なります。
PWR[kg/PS] = 車両重量[kg] ÷ 最高出力[PS]
大きな違いはPWRは小さいほど高性能だということです。それに、最高出力の単位がPWRは馬力(PS)、PMRはワットです。
PMRとPWRは相互に変換可能です。
PMR[W/kg] = 735.5 ÷ PWR[kg/PS]
日本ではほとんど関係ない「PMR」
WLTPではPMR の値によって3クラスに分けられ、それぞれ異なる測定方法を使います。
クラス1 | クラス2 | クラス3 | |
---|---|---|---|
PMR | ~22 | 22~34 | 34~ |
パワーウエイトレシオ (参考) |
33.4~ | 21.6~33.4 | ~21.6 |
車重1トンの場合の エンジン最高出力 |
~30 ps | 30~46 ps | 46 ps~ |
3種類に分かれるから重要じゃないか!という気がしますが、実際には日本ではほとんど関係ありません。なぜならほぼ全車種クラス3だからです。
2017年1月現在、日本で市販されている全乗用車の中でクラス3に含まれないのはたった1車種。
ホンダの軽自動車バンの「バモス」と、ハイルーフ仕様の「バモスホビオ」だけです。バモス/バモスホビオのうち、4AT・4WD仕様(PMR 35.2~35.5)だけはクラス3に入りますが、他はPMRが32.4~33.7でクラス2に該当します。
他のあらゆる車がクラス3です。軽でもミニバンでもSUVでもみんなクラス3です。
PMRの大きい車
スーパーカーなど高性能な車ほど、PMRが大きく(=PWRが小さく)なります。
例えば、フェラーリ・488GTBのPMRは359.1。余裕の余裕のクラス3ですね。
クラス1,2が用意される理由
ほとんどクラス3しか無いなら、クラス1,2なんて必要無さそうですよね。でもそんなことはありません。
燃費測定を行うためには、決められた時間で加速する必要があります。WLTPでは過去の燃費基準よりさらに現実的(=厳しい)燃費測定方法になっているので、ある程度短い時間で加速するようになっています。
すると、車重に対してエンジンパワーが非常に小さい車ではちゃんと測定できないということが起きます。でも世界中で同一基準を作ろうとすれば、発展途上国の廉価車(=低性能車)も対象になるのに、低性能車は燃費測定不能になってしまいます。一方で極端な低性能車でも測定できるようにすれば、現実の交通環境から乖離してしまいます。
そこで、およその加速性能を表す指標「PMR」で分類し、普通の車はクラス3、発展途上国の低性能車はクラス1や2に分類することにしたわけですね。
したがって、日本や欧州各国などの先進国でほぼクラス3しか使われないのは当然のことなわけです。
ちなみに……
ちなみに、インドで爆発的に売れた、スズキの「マルチ・800」はガソリン仕様がPMR 40.4、LPG仕様でPMR 37.4。どちらもクラス3ですね。
世界最安の市販車として話題になったタタ・ナノは、初代モデルがPMR 40.0~41.4、2代目がPMR 36.6~40.3。こちらもクラス3。
時代を遡って、日本最初の国民車として知られるスバル・360(1958~1970年)は16ps(11.8kW)で385kg。PMRは30.6でクラス2に分類されます。
それにしても、50年前の軽自動車(当時の基準で)でもクラス2ですか。クラス1に該当する車って本当にあるのかは疑問です。クラス2の測定すらできない車が存在した場合のために念のため規定しただけかもしれませんね。
まとめ
日本においてはほぼすべてクラス3。共通したクラスでの測定となります。
ただし、最高速度が120km/hに達するか否かによって測定内容がほんの少し変わります。最高速度120km/h以上は「Class 3b」、120km/h以下は「Class 3a」となります。
JC08からWLTPに変わることで、発進が得意なハイブリッド車はやや不利になります。
より実態に即した測定内容になるので、純粋にエンジン性能を高める技術が有利になってくることでしょうね。