日産ノートe-POWER発表!シリーズハイブリッドで新時代を切り開くか
2016/12/15
日産がノートのマイナーチェンジに伴って、新モデル「ノート e-POWER」を投入してきました。注目は乗用車では国内初となる「シリーズハイブリッド」を採用していることです。
新時代を切り開くかもしれないこの車、一体どんな車なのでしょうか?
ノートe-POWERの試乗記はこちら↓
目次
日産・ノートってどんな車?
日産のコンパクトカー「ノート」のハイブリッド仕様が「ノート e-POWER」です。まずはベースの「ノート」について見ていきましょう。
Bセグメント最大級のコンパクトカー
日産・ノートはハッチバック形式のコンパクトカーで、セグメント区分ではBセグメントに該当します。
全長は4,100mmで、国産Bセグメントでは最大級です。国産Bセグメントハッチバック(通称コンパクトカー)は3,850~3,995mmが主流で、アクア・ヴィッツ・フィット・バレーノ・スイフトなどはすべてここに収まります。
ノートを超える長さだと、サイズだけでなく車格的にもCセグメントになります。Bセグメントロングというサイズもありますが、ノートはベース車種があるわけではないので普通のBセグです。
ただ、幅に関しては1,695mmで普通です。日本では5ナンバーの1,700mm未満が歓迎されますが、国外向けではスズキ・バレーノ(1,745mm)のようにもう少し幅広の方が好まれます。
日産を代表するコンパクト
日産の現行コンパクトカーは他にマーチ、キューブ、リーフがあります。
マーチは同じBセグながらノートより一回り小さく、タイ生産で品質に難があります。
キューブはその名の通り箱型の車体が特徴で、サイズは国産コンパクトでは平均的です。ただ、現行モデルは発売から8年が経過していて新鮮さに欠けます。
リーフは電気自動車という(現在は)特殊なモデルですし、サイズ的にはCセグメント。価格も補助金を含めても250万円クラス以上なので色んな意味で別格です。
こうして見ると、ノートは現行日産車で最もベーシックなコンパクトカーと言えそうです。
日産・ノート e-POWER
日産ノートe-POWERは、2016年11月のノートのマイナーチェンジに合わせて投入された新モデルです。国産乗用車初のシリーズハイブリッド搭載車です。
シリーズハイブリッドとは?
シリーズハイブリッドは、現在販売されている「トヨタ式ハイブリッド」や「ホンダ/スズキ式ハイブリッド」とは異なる方式のハイブリッドカーです。端的に言えば「エンジン発電式EV」です。
ホンダ/スズキ式は走行のメインはエンジンで、燃費向上のためにモーターがアシストする形態です。トヨタ式はエンジン・モーター・発電機を複雑に制御して協調動作させる形態です。
ノートe-POWERのシリーズハイブリッドは、走行する動力は完全にモーターのみです。エンジンは駆動力を得るためではなく、単に発電するためだけに使われます。
3種のハイブリッドの詳しい違いは以下の記事をご覧ください。
レンジエクステンダーEVではない
ノートe-POWERを「レンジエクステンダーEV」だとして紹介している人もいますが、ノートe-POWERはレンジエクステンダーEVではありません。外部充電設備が無いからです。詳しくは以下で解説しています。
ノートe-POWERの開発者も、「構造はレンジエクステンダーEVと同一だが、外部充電設備やバッテリーの点で異なる」と説明しています。
リーフ(EV) + ノート(ガソリン車) = ノートe-POWER
スペックを見ると、「ノートe-POWER」は リーフ と ノート を融合させた車だと分かります。
車種 | ノート e-POWER | ノート | リーフ | |
---|---|---|---|---|
方式 | シリーズハイブリッド | エンジン | EV | |
車両重量 | 1,170-1,220 kg | 1,030-1,090 kg | 1,430-1,480 kg | |
エンジン | 排気量 | 1,198 cc | 1,198 cc | - |
最高出力 | 79ps / 5,400rpm | 79ps / 6,000rpm | - | |
最大トルク | 10.5kgm / 3,600-5,200rpm | 10.8kgm / 4,400rpm | - | |
モーター | 最高出力 | 109ps / 3,008-10,000rpm | - | 109ps / 3,008-10,000rpm |
最大トルク | 25.9kgm / 0-3,008rpm | - | 25.9kgm / 0-3,008rpm | |
走行用バッテリー | リチウムイオン | - | リチウムイオン |
※ 車両重量は2WDのみ。
ノートe-POWERの走行用モーターはリーフと同じEM57です。モーター性能は同一ですがリーフよりバッテリーが小さく軽い分、走行性能はリーフを上回ります。
発電用エンジンは、通常のノートの走行用エンジンと同じ1.2L 直列3気筒エンジン「HR12DE」を搭載しています。ただ、効率的に充電するために制御を変えているようで、最高出力回転数や最大トルクが異なっています。
スペックもモーターメイン
他の方式のハイブリッド車と比較してみましょう。
車種 | 日産 ノート e-POWER |
トヨタ アクア |
ホンダ フィットハイブリッド |
|
---|---|---|---|---|
方式 | シリーズハイブリッド (エンジン発電式EV) |
スプリットハイブリッド (トヨタ式複雑制御) |
パラレルハイブリッド (モーターアシストガソリン車) |
|
車両重量 | 1,170-1,220 kg | 1,050-1,090 kg | 1,080-1,150 kg | |
エンジン | 排気量 | 1,198 cc | 1,496 cc | 1,496 cc |
最高出力 | 79 ps | 74 ps | 110 ps | |
最大トルク | 10.5 kgm | 11.3 kgm | 13.7 kgm | |
モーター | 最高出力 | 109 ps | 61 ps | 29.5 ps |
最大トルク | 25.9 kgm | 17.2 kgm | 16.3 kgm | |
走行用バッテリー | リチウムイオン | ニッケル水素 | リチウムイオン | |
燃費 (JC08) |
34.0-37.2 km/L (2.7-2.9 L/100km) |
33.8-37.0 km/L (2.7-3.0 L/100km) |
31.4-36.4 km/L (2.7-3.2 L/100km) |
|
価格 | 196 万円~ (177 万円~) |
189 万円~ (176 万円~) |
169 万円~ |
※ 括弧内価格は後席パワーウィンドウすら無い装備引っぺがしグレード。
ノートe-POWERは走行がモーターメインなので、モーターの性能はエンジンを上回っています。特に最大トルクはエンジンの倍以上あります。
プリウスはエンジンとモーターが協調動作するので、エンジンとモーターは似たような性能です。一方フィットハイブリッドはエンジンがメインなので、モーターは補助レベルです。最大トルクこそ大きいものの、最高出力は30馬力しかありません。
燃費や価格は同じBセグハッチバックのアクアやフィットハイブリッドと同程度です。
グレード構成に注意!
ノートe-POWERは3グレード構成になっていますが、実質2グレード構成です。グレード「e-POWER S」は、エアコンを始めあらゆる快適装備がガッツリ削られています。燃費はたしかに最も良いんですが、エアコンすら付いておらずオプション装着もできません。「ノートe-POWERは最大燃費37.2km/L、177万円~」と書かせるためだけに存在するグレードです。ハッキリ言ってこんなグレード誰も買いませんよ!実際2016年11月のノート販売台数15,000台のうち、「e-POWER S」は0台だそうです。
声を大にして言いたい。ノートe-POWERは「196万円~、34.0km/Lです!」と。悪意ある誘導に騙されないでくださいね。
今後シリーズハイブリッドが増える理由
今後は同じシリーズハイブリッドを採用した市販車が増えてくると思います。
まず前提として、ガソリンエンジン車からEV(電気自動車)へ転換していくという大きな流れがあります。トヨタは燃料電池車の開発もしていますが、水素ステーションがまだ全然なく、普及するにはまだまだ時間がかかります。現実にはEVの普及の方が早いでしょう。
EVの不便さ
EVの問題点は航続距離の短さと充電に時間がかかることです。テスラモーターズのように航続距離を大きく改善した車種もありますが、ガソリン車程の利便性を獲得するには至っていません。
EVの不便さは「出先で充電できないと困る」ということです。ガソリンなら全国どこでも手に入りますが、充電設備はどこでもという程ではありません。
エンジンメインからモーターメインへ
これからはプラグインハイブリッド(充電可能ハイブリッド車)やEVがどんどん増えていくと思います。車への充電が一般的になると、維持費の安さ、環境負荷の低さ、静粛性や乗り心地の良さといったEVのメリットが目立つようになってきます。
すると、EVのデメリットを補ったシリーズハイブリッドが魅力的になってきます。「普段は充電してEVとして使うけど、充電できないときはガソリンエンジンで発電する」という使い方ができるようになります。
今までのハイブリッド車は前提としてガソリンエンジン車があって、その欠点(燃費)を補うためにモーターとバッテリーを搭載してハイブリッド化されました。
これからのハイブリッド車は前提として電気自動車があって、その欠点(航続距離と充電時間)を補うためにエンジンとガソリンタンクを搭載してハイブリッド化した車(=シリーズハイブリッド車)が増えていくことになるでしょう。
充電設備がさらに普及し、家庭での充電も一般的になってくれば、予備的にほんの小さなエンジンを積んだ「レンジエクステンダーEV」といった形態に変化していくことと思います。
まとめ
「ハイブリッド」という言葉だけだと、今までのハイブリッド車と同じように聞こえますが、中身は将来のEV時代を見据えた新しいハイブリッド車になっています。
日産はEVのリーフを持っていることもあって国内で最初に投入しましたが、今後は世界中の自動車メーカーがこのジャンルに実用車を投入していくことになるでしょう。シリーズハイブリッド車が売れるのか注目です。ガソリンメインのハイブリッド車には欠点もあるので、私は十分に戦えると思っています。
ノートe-POWERの試乗記はこちら↓