メルセデスベンツAクラス試乗レビュー!静粛性はなんとかならなかったのか

   

メルセデスベンツ・Aクラスに試乗してきました。

ベンツの放つCセグメント車はどんな走りなのでしょうか?

メルセデスベンツAクラスってどんな車?

AクラスはメルセデスベンツのCセグメントハッチバックです。ベンツのラインナップでは最もベーシックかつ安価なモデルで、スタート価格は298万円です。

Aクラスの派生モデル

Aクラスをベースとした派生モデルが4車種出ています。

車種名 ボディ形状 価格
Aクラス 5ドアハッチバック
4,300×1,780×1,435 mm
298~720 万円
Bクラス 5ドアハッチバック
4,400×1,785×1,545 mm
316~505 万円
CLAクラス
クーペ
4ドアクーペ
4,645×1,780×1,440 mm
379~773 万円
CLAクラス
シューティングブレーク
5ドアステーションワゴン
4,645×1,780×1,445 mm
395~789 万円
GLAクラス 5ドアハッチバック(SUV)
4,430×1,805×1,505 mm
358~779 万円

Aクラスをベースに、全高を上げて車内空間を広くしたのが「Bクラス」。少し伸ばしてクーペ風にした「CLAクラス クーペ」と、CLAクーペをステーションワゴンにしたのが「CLAクラス シューティングブレーク」。地上高を上げてSUVに仕立てたのが「GLAクラス」です。

エンジンラインナップ

派生モデルはボディ形状やサイズが異なりますが、ホイールベースはすべて2,700mmで、エンジンラインナップもほぼ同一です。

エンジンは1.6Lターボ(122ps)、2.0Lターボ(218ps)、2.0Lターボ(360ps)の3通りから選ぶことになります。Aクラスでの3エンジンのスペックは以下の通り。

車種 メルセデスベンツ・Aクラス
グレード A180 スタイル A250 シュポルト
4マチック
A45 AMG
4マチック
車重 1,430 kg 1,530 kg 1,550 kg
駆動方式 FF 4WD 4WD
トランスミッション 7AT
エンジン形式 直列4気筒
排気量 1.6L ガソリンターボ 2.0L ガソリンターボ
最高出力 122ps /
5,000rpm
218ps /
5,500rpm
360ps /
6,000rpm
最大トルク 20.4kgm /
1,250-4,000rpm
35.7kgm /
1,200-4,000rpm
45.9kgm /
2,250-5,000rpm
燃費 17.6 km/L
(5.7 L/100km)
13.7 km/L
(7.3 L/100km)
12.6 km/L
(7.9 L/100km)
価格 298 万円~ 534 万円~ 720 万円~

今回試乗したのは、Aクラスに1.6Lターボエンジンを搭載した「A180」。ベンツがラインナップする全車種で最もベーシックなモデルということですね。A180は122馬力の1.6Lターボエンジンに7速DCTを組み合わせています。

デザイン

Aクラスの内外装デザインに軽く触れておきましょう。

エクステリアデザイン

Cセグメントとしては、かなりガッツリ主張するタイプのデザインです。フロントグリルが大型なので、前から見ると1クラス上の車にも見えてしまいますね。顔だけ見ればこれがゴルフと同クラスとは思えません。

ボルボ・V40

雰囲気が似ているのはボルボ・V40でしょう。Cセグメントの中でも特に低く構えたスタイリング(見た目の印象だけで、実際の全高はさほど低くない)、フロント中央に大きく構えたグリルと丸形エンブレム、車体に対して大きめのヘッドライトなど、似ている要素がたくさんあります。Aクラスのカタログを見ていると角度によっては本当にV40に見えます。

ちなみに現行Aクラスと現行V40は、どちらも2012年のジュネーブショーで世界初公開されました。両車ともメーカー内の他の車種と共通するデザインですし、特にどちらかがパクったという話ではなさそうです。

ただしAクラスはV40のような上品さはなく、「どうだベンツだぞ」と過剰に主張するフロントデザインになっています。ある種アルファードやベルファイヤで言われる「押し出し感」(外見上の迫力)が車種のクラスより過剰に感じます。こんな顔でCセグハッチバックではやや拍子抜けします。

メルセデスベンツ・Aクラス

Aクラスのリアはフロントと違って普通です。BMW・1シリーズもそうですが、ドイツのCセグメント車はどうしてこうリアデザインに色気が無いのでしょうね。

ルノー・メガーヌ(フランス)


アルファロメオ・ジュリエッタ(イタリア)

メルセデスベンツの本拠がセダンなのは分かっていますが、A1のリアは抑揚というか特徴がなさ過ぎです。ボルボV40もリアは特徴的な造形なので、Aクラスの切り立つ壁のようなリアデザインが残念すぎます。顔は迫力過剰、でもリアは凡庸。それがAクラスのエクステリアデザインです。

他に気になった所としては、ワイパーが奇妙な動きをします。1軸の単純な円弧ではなく、下に収納される時に少しだけ横にスライドします。おそらく不使用時にワイパーを奥まった位置に格納するためでしょう。空気抵抗・風切り音の低減と、デザイン上の美しさが目的でしょうね。

インテリアデザイン

ベンツらしく上質にまとめられています。

外見はボルボ・V40に似ていましたが、内装の方向性はまるで異なります。V40はオシャレなインテリアで、タイプとしてはフランス車やイタリア車と同系統です。できあがったデザインは全く似ていませんが、内装で美しさやオシャレさを重視している点は同じ。一方Aクラスは上級セダンに入れるような高級感をそのまま下位クラスに降ろしてきたタイプで、オシャレさよりも上質さを表現しようとしています。ちなみにBMW・1シリーズは「スポーティ」、フォルクスワーゲン・ゴルフは「地味で無難」がテーマです。

Aクラスと同様の目的で内装をデザインしているのはアウディ・A3ですね。

私はA3の内装は好きですが、正直Aクラスの内装はあまり好きではありませんでした。Cセグメント(≒実用車クラス)なのに無理して上質を表現しているような感じがしてしまいます。頑張りすぎてるフロントデザインも無理に上質を出そうとする内装も、クラスや価格帯から逸脱して浮いてしまっている感じがします。

最近のベンツ車にはシフトレバーやサイドブレーキがありません。ATのシフトレバー(セレクトレバー)はハンドルの右側、日本車でのウインカーレバーの位置です。日本車に乗る機会がある人は間違えて操作しそうですね。走行中に間違えたところでリバースに入ったりはしませんが、操作ミスの発生は地味なストレスになりますし、信号待ちで「やっぱり曲がろう」とレバーを倒したらリバースに入るなんてことも起きるでしょう。あの位置の設計は、少なくとも日本人には不親切です。まぁ世界的に右がウインカーレバーなのはほぼ日本だけ(左側通行のイギリスもウインカーは左側)なのである意味無視されているんでしょうね。

走り

今回試乗したのはAクラスの中でも下位グレードとなる「A180」。1.6Lターボエンジンを搭載しています。Aクラスは1.6Lターボが298万円~なのに対して、上の2.0Lターボは534万円~。Cクラスの2.0Lターボが545万円で買えるのでAクラスを買う人はほぼ1.6Lターボエンジンにするでしょうね。

加速感

A180は1.6Lターボにしては結構控えめな122ps/20.4kgmというエンジンスペックです。それでいて1,440kgというなかなかの重量車。Cセグメントのベンチマーク、フォルクスワーゲン・ゴルフの1.4Lターボは140ps/25.5kgm/1,320kg。スペック上ではAクラスはまるで勝てていませんね。

Aクラスには走行モード設定があって、[コンフォートモード][スポーツモード][エコモード]から選択することができます。変化するのはパワステ制御、エンジン制御、変速タイミング、アイドリングストップ、エアコン制御で、3モード以外に個別設定にすることも可能です。

まずはコンフォートモード(=ノーマルモード)での走り。やはり加速時は車重の重さを感じました。コンフォートモードでもしっかりアクセルを踏めば出力が立ちあがりますが、日常の走りでは「余裕」をあまり感じません。

次ぎにスポーツモード。パワステ制御に関しては差が少なすぎてあまり分かりませんでした。エンジン出力(というかアクセルペダルに対する反応)は良くなりますが、やはりエンジン性能の限界か加速感には不足を感じます。感覚としてはゴルフ1.2L(105ps/1,240kg/250万円~)が近い感じ、と思って計算してみるとパワーウエイトレシオは11.8kg/psでぴったり同じです。

少なくとも日本国内ではメルセデスベンツはプレミアムブランドとして認識されています。実用的なCセグメントハッチバックとはいえ、300万円を超える車にしては性能が低すぎです。ましてプレミアムブランドならもっと余裕ある走りを期待してしまうもの。ベンツでこんな走りかよという感じもしてしまいます。

足回り

かなりしっとり穏やかな足回りです。スポーティな走りをするには少し柔らかすぎるかな、という感じがしましたが、普通に走る分にはCセグメントで一級レベルの非常に乗り心地の良い車に仕上がっていました。

ただし安定感ではCクラスにはやや劣ります。直進ではあまり差がありませんが、轍やコーナリングではリアがバタついているように感じました。

ドライビングポジション

座席位置が低めなので、Cセグメントハッチバックにしてはかなりセダンっぽい感覚で運転できます。これは結構な良いポイントですね。

ペダルは通常の吊り下げ式。オルガンペダルになるのはCクラスからです。駆動方式(Aクラス系はFF、他はFR)も含めて、Aクラスはあくまでエントリーモデル。上級車と共通する構成になるのはCクラスからということですね。

ブレーキペダルが手前過ぎてアクセルからの踏み替えがしづらいのはCクラスと共通しています。まぁ同メーカー内で分けられても困るので、メルセデス的にはこれが適切だと判断したんでしょうね。でもブレーキを踏むのに足を手前に引かないといけないのは単純に危険だと思います。

ステアリングのチルト・テレスコ(上下・前後調整)機構はもちろん装備しています。調整範囲はさほど広くありませんが、私にはちょうど良い位置に調整できました。Cセグメント車としてはステアリングが結構手前にできるのがいいですね。ドライビングポジションの調整感は1シリーズやアクセラに次ぐレベルに良かったです。ステアリング位置はドイツ車(と最近のマツダ車)が最も調整しやすく、日本車はそこそこ、イタリア/フランス車は変に上を向いた位置にしか調整できないというのが相場。Aクラスもその通り優秀でしたね。

ステアリング調整はオプションで電動化も可能です。電動化のメリットは動かすのが楽だなんてことではありません。シート調節とセットでメモリー登録することで、他の人が運転した後でも自分用の位置に即座に戻せることに価値があります。ドライバーが複数いる(妻が運転するなど)場合、結構意味があります。

静粛性

ここがAクラスで最も重大なポイント。エンジンの静粛性が高くありません。車重に対して低出力だからエンジンが頑張らないといけないのは分かりますが、プレミアムCセグメントとしてはうるさすぎます。4気筒ガソリンエンジンなんですが、実はディーゼルなんじゃないかってほどにうるさいです。これにはちょっと落胆しました。

排気量は比較的余裕のある1.6L。もっと上質な設計もできたんじゃないでしょうか。格下(非プレミアム)のフォルクスワーゲン・ゴルフがかなり静かだったので、これで300万円超えはちょっとなぁという感じです。

残念ながらこのエンジンのうるささは同エンジンを搭載するCクラスのC180でも同様です。車重に対するエンジンパワーのバランスも、ボディ静粛性の設計も問題があるようです。プレミアムを期待しても車内に伝わるサウンドは実用車そのものでした。

スペック比較

ドイツプレミアム御三家と、ゴルフを比較してみました。

車種 メルセデス・ベンツ・Aクラス BMW・1シリーズ アウディ・A3 フォルクスワーゲン・ゴルフ
グレード A180 スタイル 118i スポーツバック1.4TFSI TSIトレンドライン
全長 4,300 mm 4,340 mm 4,325 mm 4,265 mm
全幅 1,780 mm 1,765 mm 1,785 mm 1,800 mm
全高 1,435 mm 1,440 mm 1,450 mm 1,460 mm
ホイールベース 2,700 mm 2,690 mm 2,635 mm
車重 1,430 kg 1,320 kg 1,240 kg
駆動方式 FF FR FF
トランスミッション 7AT 8AT 7AT
エンジン形式 直列4気筒 直列3気筒 直列4気筒
排気量 1.6L ガソリンターボ 1.5L ガソリンターボ 1.4L ガソリンターボ 1.2L ガソリンターボ
最高出力 122ps / 5,000rpm 136ps / 4,400rpm 122ps / 5,000-6,000rpm 105ps / 4,500-5,500rpm
最大トルク 20.4kgm / 1,250-4,000rpm 22.4kgm / 1,250-4,300rpm 20.4kgm / 1,400-4,000rpm 17.8kgm / 1,400-4,000rpm
フロントサス ストラット
リアサス マルチリンク トーションビーム
燃費 17.6 km/L
(5.7 L/100km)
18.1 km/L
(5.5 L/100km)
19.5 km/L
(5.1 L/100km)
21.0 km/L
(4.8 L/100km)
価格 298 万円~ 310 万円~ 303 万円~ 250 万円~

最下位グレードで比較した場合、1シリーズは3気筒になることが最も痛いポイント。ガソリンエンジンで4気筒にすると418万円~と価格が跳ね上がります。

オススメはどれ?

総合的な完成度で言えばプレミアムCセグメントではアウディA3、ベーシックなCセグメント車ではVWゴルフが勝っています。3気筒では無い分Aクラスにも勝機はあるのかもしれませんが、Aクラス・1シリーズ・A3を乗り比べるとA3だけは不満がないという結果になりました。

まとめ

日本では高級車の代表格とされるメルセデスベンツ。結構期待していたんですが、最下位となるAクラスは正直微妙でした。「ベンツ」という名前と外観の迫力が欲しいなら別に止めませんが、運転の快適さや上質さ、高級感といった面では所々問題点がありました。最大の欠点はやはりパワー不足と静粛性の無さに起因するエンジンのうるささでしょうね。

メルセデスベンツ・Cクラスの試乗レビューはこちら↓

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