450馬力のベンツS550クーペがエコカー減税になる理由。奇怪な燃費基準とは
メルセデスベンツの最高級クーペ「S 550 Coupe」が発表されました。455馬力、71.3kgmという性能もさることながら、驚きなのがエコカー減税の対象であること。1700万円のハイパフォーマンスカーが減税になるカラクリを紐解いてみましょう。
どんな車なの?
発表されたのはメルセデスベンツのフラッグシップたるSクラスのクーペモデル。かなりハイパフォーマンスです。
メルセデス・ベンツ日本は、メルセデス・ベンツの最高級スポーティクーペ「Sクラス クーペ」のラインアップに「S 550 Coupé」を追加したと発表。(中略)車重2110kgという堂々たる体躯の持ち主。そのボディを4.7リッターV型8気筒DOHC直噴ターボエンジンが牽引する。その出力&トルクは、455ps、71.3kgmという強大なアウトプットとなる。(中略)同車のJC08モード燃費は9.6km/リッターを達成してエコカー減税の対象車となり、自動車税50%軽減、取得税40%軽減、重量税25%軽減となる。車両価格は1740.0万円。(455ps/71.3kg.mの超弩級クーペがメルセデスから。それでもエコカー減税適合車 より抜粋)
4.7Lターボは伊達じゃありませんね。455馬力ですよ。「エコ」なんて微塵も感じさせませんね。なのにエコカー減税の対象。一体どういうことでしょうか?
エコカー減税の基準
現在のエコカー減税は排出ガス規制と燃費によって決まっています。問題は燃費。基準は一様に「何km/L以下」となっているのではなく、車重によって基準が異なっています。
車重 | 燃費基準 (JC08) |
---|---|
~600 kg | 22.5 km/L |
600 kg~740 kg | 21.8 km/L |
740 kg~855 kg | 21.0 km/L |
855 kg~970 kg | 20.8 km/L |
970 kg~1,080 kg | 20.5 km/L |
1,080 kg~1,195 kg | 18.7 km/L |
1,195 kg~1,310 kg | 17.2 km/L |
1,310 kg~1,420 kg | 15.8 km/L |
1,420 kg~1,530 kg | 14.4 km/L |
1,530 kg~1,650 kg | 13.2 km/L |
1,650 kg~1,760 kg | 12.2 km/L |
1,760 kg~1,870 kg | 11.1 km/L |
1,870 kg~1,990 kg | 10.2 km/L |
1,990 kg~2,100 kg | 9.4 km/L |
2,100 kg~2,270 kg | 8.7 km/L |
2,270 kg~0 kg | 7.4 km/L |
S550クーペの車重は2,110kg。基準は8.7km/Lです。この基準を何%上回っているかで減税額が決まります。極端な話、重ければ燃費が悪くてもいいということです。
もちろん車重が軽い方が燃費は向上させやすいです。ですが、車重半分の1,055kgの場合の燃費基準は20.5km/L。車重が半分になったのに基準燃費は倍以上です。こちらを達成する方がより厳しいのではないでしょうか?
燃費基準の奇怪さ
燃費を向上させるための企業努力としては、車重を削減することももちろん含まれるでしょう。ですがエコカー減税の基準は「重かったら基準ゆるくしてあげるよ」と言っていて、同じパワートレインで車体を軽くしたらより減税基準が厳しくなるという矛盾を含んでいます。車重が軽くて小排気量のエンジンで済むのであれば、そちらの方がよっぽど「エコ」だと思います。
エコロジーという意味では燃料消費は少なければ少ないほど良いはず。重い車体を優遇するのは間違っていると思います。車重で多少の傾斜を付けるべきなのかもしれませんが、傾斜を付けすぎです。1tで20km/Lなら、2tではせめて10km/L以上を基準にして欲しいところ。
2tの車体に4.7Lターボのエンジンで9.6km/Lを達成する低燃費技術はもちろん素晴らしいのでしょうが、重い車体に超ハイパワーエンジンを積んだ車をエコカーだと認定する減税政策は間違っていると言わざるをえませんね。