EVベンチャー「テスラモーターズ」を3つの特徴で理解しよう!
2015/07/03
電気自動車で世界を席巻しているEVベンチャー・テスラモーターズが、新モデル「モデルX」を2015年7〜9月期に投入することを、株主総会の場で明らかにしました。
そんなテスラモーターズ、一体どんな会社なんでしょう。
テスラモーターズってどんな会社?
テスラモーターズはアメリカのEV(電気自動車)メーカーです。他の自動車メーカーが電気自動車への参入に躊躇する中ベンチャー企業として完成度の高いEVを発売し、急激に成長しているメーカーです。
日本でも、三菱がi-MiEV、日産がリーフを投入してEVに参入していますが、テスラモーターズのEVやその売り方は結構違っています。何が違うのか、テスラを象徴する3つの特徴で紹介しましょう。
テスラの特徴①:航続距離が長い
他のメーカーが航続距離が短く利便性に劣る中、テスラのEVは航続距離が非常に長いことでガソリン車と比べた時の不便を軽減していることで好評を博しています。実際、三菱i-MiEVはJC08で120~180km(モデルによる)、日産リーフはJC08で228kmと、東京-名古屋間ですら走破できないのに対し、テスラロードスターは公称378km、テスラモデルSは公称502kmと(いずれもJC08ではないので直接比較はできませんが)長くなっています。モデルSでは東京-大阪間に匹敵する距離を無充電で走破できることになりますね。
長い航続距離の理由は単純で、大容量のバッテリーを積んでいるからです。実際、テスラ・ロードスターのバッテリー容量は53kWhで、三菱i-MiEV(10.5kWhまたは16kWh)の3倍以上の容量を搭載しています。ちなみに2015年現在の一般的なノートパソコンのバッテリー容量はせいぜい50Whなので、ノートパソコン1000台分のバッテリーですね!……分かりにくいですかすいません。
三菱・i-MiEVなんかは一日の平均走行距離が40kmを根拠に十分だと主張していますが、かなり無理がありますね。平均40kmということは、10kmや20kmの日もあれば100km、200km走る日もあるということです。「平日は通勤で往復30km」「休日はたまに遠出して往復150km」「帰省や泊まりの旅行では2、300km」なんてごく一般的な使い方だと思います。企業が特定用途に使うならまだあり得ますが、一般家庭が(外出中無充電で)使うにはまだまだ無理があります。その点テスラの航続距離は常用するEVとして現実的ですね。
とは言ってもまだ生産規模は小さな自動車会社といったレベル。最初のモデルである「ロードスター」の生産はすでに終了していて、現在のラインラップは大型セダンの「モデルS」のみとなっています。
テスラの特徴②:テスラの車のどこを売り込むか?
日本で先にEVを販売したメーカーが
と完全にEVであることのメリットのみを主張しています(それぞれの車種トップページから抜粋)。
それに対してテスラ・モデルSでは、
と、EVや電子デバイスを含めた車としての完成度を示しています。
もちろん車の成り立ちが、i-MiEVとリーフが既存のガソリンエンジン車をベースにしていて、テスラ・モデルSがEV専用設計という事情はありますが、「EVです。だから買ってください。」という売り方とは一線を画していますね。
テスラの特徴③:EVのメリット
EVのメリットって何でしょう? エコ?電気代?充電スポット?補助金や減税?
テスラ・モデルSを紹介するウェブページのトップにはこう書いてあります。
人間工学の進化
テスラの高度な電気パワートレインは、爽快なパフォーマンスを発揮します。数百個の可動部品があるガソリンエンジンと
異なり、テスラのモーターの可動部品はローターただ1つです。そのため、Model Sは静かに、スムーズに、そして瞬時に加速
します。アクセルを踏んでからわずか3.4秒で、Model Sは一滴のガソリンを使うことなく、一気に時速100 kmに達します。
Model Sは自動車工学の進化を体現しています。(http://www.teslamotors.com/jp/models)
「環境」「ランニングコスト」「補助金」なんて言葉では出てきません。売り文句は「静か」「スムーズ」「加速性能」。なぜこう書くのでしょうか?
テスラ・モデルSの価格は800万円を超えています。歴史が浅く長期信頼性のまだ分からないテスラの車に800万円を投じることができるのは経済的に余裕がある人に限られます。ちなみにBMWの上級セダン「5シリーズ」が630万円から買えます。
経済的に余裕があって800万円の車を買う人が、日々のガソリン代が安い電気代で済むことや補助金なんかでなびくでしょうか? EVを買う人は皆地球の将来を考えて800万円を出しているのでしょうか? そんなことはありませんよね。そういった人たちに訴求するには別の売り文句が必要です。
テスラのEVが売れているのは、以下の特徴があるからでしょう。
- 高い走行性能。特に加速性能はスーパーカー並み。
- 車室の広さ。エンジンが無いのでフロントボンネット内にも荷物が入り、セダンなのに子供2人を含む7人が乗れる(法規上日本仕様は5人乗り)。
- 先進の電子機器。スマートフォンのようにソフトウェアアップデートで機能が追加できる。
自分の顧客像をちゃんと分かっているなぁと思います。
テスラモーターズの未来
テスラモーターズは今までと異なる車の売り方を提唱したことに大きな意義があると思います。EVを世界に広めるべく廉価版の開発を進めるテスラモーターズは、自動車業界をひっくり返すEVの巨人になるのかもしれませんね。