RX-8のレンタカー借りてみた。自然吸気ロータリーの神髄
ロータリーエンジンのフィーリングを試してみたくなったので、現在の所最後のロータリーエンジン搭載車であるマツダ・RX-8をレンタルして半日ほど乗ってみました。
ロータリーエンジンと言えば、もうすぐ開催される東京モーターショーで新型コンセプトカーの公開が発表されています。
「ロータリーエンジン搭載車」の価値をまざまざと見せつけられてしまいましたよ!
目次
スポーツカーをレンタルできるお店
今回利用したのは、千葉県野田市にあるおもしろレンタカーというレンタカー屋さんです。
その名の通り普通はレンタルできないような面白い車をレンタルできることが特徴で、スポーツカー(ほとんどMT)や輸入車、高級車なんかをレンタルすることができます。野田市の本店以外に東池袋と和歌山に店舗を持っているようですが、在庫車種は本店が圧倒的に多いですね。
スポーツカーを借りられるレンタカー屋ってかなり少なくて、変わった車を専門に扱うお店は他に数店しか無いようです。確かに事故のリスクは高いですし、手荒に扱われて維持も大変なんでしょうが、こういうお店には頑張って欲しいですね。最近ではホンダ・S660や新型ロードスターのレンタルも始めたそうです。
RX-8は6時間ナビ付きで約6,000円でした。お店のラインナップでは最安レベル。これなら気軽に借りられますね。
若者でも乗れる良い機会
免許取ったけど車無いからレンタカーで遊びに行こう
→ 5,000円でレンタルできるならスポーツカーでもレンタルしてみるか
→ スポーツカーおもしれぇ!
→ 中古でもいいからスポーツカー買おう
なんて理想的な流れじゃないですか。若者の車離れとか言ってる場合じゃないですよ。
私は元々スポーツカーに興味があって、たまたま気になった中古のロードスターに乗ってオープンカーの素晴らしさに目覚めたわけですが、普通の人は車種を決めずに車屋になかなか行けませんよね。でも仲間と出かけるときにレンタカーは普通に借りる。そのいつも借りるレンタカーをちょっと違うのにしてみるだけで違う世界が見えるかもしれません。
マツダ・RX-8という車
さてさてレンタカーの話はこれくらいにしてRX-8です。
ピュアスポーツカー「RX-7」の後を引き継いで、マツダが誇る孤高のエンジン「ロータリーエンジン」を搭載し、2003~2012年に販売されていました。残念ながら後継車が登場していないため、残念ながら現状最後のロータリーエンジン車となってしまいました。
最大の特徴はスポーツカーでありながら、4ドア4シーターであることです。しかもRX-7のような「存在するだけの後席」ではなく、大人が普通に4人乗れるスポーツカーに仕上がっています。
ドアもかなり特徴的で、リアドアは前側が開く観音開きになっています。リアドアは前後にかなり小さいので、4ドアと言っても2+2ドアくらいの感じですね。前を開かないと後ろが開かない点は不便かもしれませんが、2ドア4シーターに比べれば後席の乗降性がかなり改善されるのでこれはこれで良いと思います。
車種 グレード |
マツダ・RX-8 | マツダ・RX-7 (3代目FD型) |
マツダ・ロードスター (現行4代目ND型) |
---|---|---|---|
販売期間 | 2003~2012年 | 1991~2002年 | 2015年~ |
グレード | タイプRS | タイプRS | RS |
ボディ形状 | クーペ | オープン | |
ドア数 | 4ドア | 2ドア | 2ドア |
定員 | 4名 | 4名(実質2名) | 2名 |
全長 | 4,470 mm | 4,285 mm | 3,915 mm |
全幅 | 1,770 mm | 1,760 mm | 1,735 mm |
全高 | 1,340 mm | 1,230 mm | 1,235 mm |
ホイールベース | 2,700 mm | 2,425 mm | 2,310 mm |
車重 | 1,350 kg | 1,280 kg | 1,020 kg |
駆動方式 | FR | ||
トランスミッション | 6MT | 5MT | 6MT |
エンジン形式 | 直列2ローター | 直列2ローター | 直列4気筒 |
排気量 | 1,308 cc | 1,308 cc | 1,496 cc |
過給機 | - | シーケンシャルツインターボ | - |
最高出力 | 235ps / 8,200rpm | 280ps / 6,500rpm | 131ps / 7,000rpm |
最大トルク | 22.0kgm / 5,500rpm | 32.0kgm / 5,000rpm | 15.3kgm / 4,800rpm |
フロントサス | ダブルウィッシュボーン | ||
リアサス | マルチリンク | ダブルウィッシュボーン | マルチリンク |
燃費 | (10-15モード) 9.4 km/L |
(10-15モード) 7.2 km/L |
(JC08) 17.2 km/L |
価格 | 2012年販売終了当時 318 万円~ |
2002年販売終了当時 385 万円~ |
320 万円~ |
絶対的な出力では、ターボが無くなった分RX-7より見劣りしてしまいますが、ストイックなピュアスポーツカーであるRX-7と、スポーツカーとスポーツセダンの要素が共存するRX-8では直接比較するのは難しいでしょうね。走りの性格が違いすぎます。
車重は70kgの増加にとどまっています。衝突安全性能の向上という時代背景と、4ドア4シーターというパッケージングを考えればかなり優秀でしょう。
レンタルした車
2005年式のタイプSです。RX-8は2008年にマイナーチェンジで外装デザイン変更(と内部の大幅アップデート)を受けているので、これは前期型です。タイプSは真ん中のグレードです。
走行距離はすでに11万キロに達していますし、(おそらく中古車を購入して)レンタカーで利用されていることを考えると相応に痛んでいるはずです。試乗したことのある後期型の新車と比べると、特にサスペンションのへたりを強く感じました。轍でガツンガツン突き上げられます。エンジンも結構キテいることと思いますので、状態を踏まえて読んでください。
内外装デザイン、始動
今回はレンタカーのレビューなので内外装デザインは軽めに。
外装デザインは今見るとさすがに古い感じがしてしまいます。RX-8も、同時期に出た3代目ロードスター(NC型)も、外装デザインは「美しい」でも「ゴツい」でもない微妙(絶妙ではない)なラインだったので、古くなったというより元々カッコ良くなかったという方が正しいかもしれません。
内装はさらに時の流れを感じました。
でもエンジンを始動すると一変、ロータリーエンジンの滑らかな鼓動、いや息吹が発せられます。何とも言えない音です。レシプロエンジンは気筒数が増えてもどうしても音に粒感がありますが、ロータリーエンジンは2ローターでも粒を感じませんでした。
走り
発進
発進から市街地の低速走行では、意外にもスムーズで違和感なく快適に走行できました。以前乗ったRX-7(FD)は低回転トルクが絶望的に無かったので、市街地での低速走行はなかなかに疲れるものだったのでそのイメージで乗りました。RX-8の低回転トルクは実用車としては十分にありますし、クラッチの繋がりも穏やかなので結構乗りやすいですね。
適当に発進しても軽々と発進する感覚は、ロードスターでの初代・2代目に対する3代目のイメージとかぶります。RX-8って3代目ロードスターとシャシー共用(の予定だったけどほとんど別物になった)ですし、登場年度もほとんど同じなので、トランスミッションやクラッチなどのドライブトレイン系は結構共通するものがあるのでしょうね。部品自体が別物だとしても、設計思想が似ているでしょうから似た感覚になるのでしょう。
加速感
RX-8の加速感は表現がムズカシイです。あまりに独特すぎるので。
抑揚のないフラットなトルクでぐんぐん回転数が上がり、トルクが落ちることなくそのままレブリミットに到達します。誇張でなくこのロータリーエンジンは異質です。
先代にあたるRX-7はシーケンシャルツインターボで高回転域の加速力は爆発的なものでしたが、RX-8は自然吸気を採用したことで(パワーは落ちたものの)ロータリーフィーリングの最もオイシイ部分を余すことなく引き出した加速感になっています。
小排気量NAの高回転域で盛り上がる感じも無く、大排気量NAのもりもりトルクでもなく、ダウンサイジングターボのどっからでもグイグイ行く感じでもなく、90年代ターボの急激に加速する感じでもなく、ロータリーターボの絶望的低回転+高回転ロケットでもなく。RENESIS(RX-8のロータリーエンジンの愛称)は「どこまでもピュアに透き通った美しい加速」でした。
RX-8乗りが言うように、気付いたらレブリミットを知らせる「ピー」という音が鳴ってしまいました。
ワインディング
RX-8を借りたからにはもちろん、ロータリースポーツの醍醐味・ワインディングをメインに走りました。
RX-8の回頭性は抜群です。アドバンスド・フロント・ミッドシップ+50:50+FRの効果は伊達ではなく、コーナリングでの頭の入り方、コーナリング中の姿勢、出口でアクセルを開いて速度を上げつつ姿勢を直して次のコーナーへ。コーナリングの走りは素晴らしいの一言です。
もちろん次のコーナーまでの時間はRX-7の方が圧倒的に短いわけですが、エイトにそれを求めること自体が間違いなのでしょう。抜群のコーナリング 性能と美しい加速フィールを楽しむために存在しているのであって、タイムを削るために存在するピュアスポーツカーとは目的が異なります。
あまり回転数が落ちてしまうと、特に登りではコーナー出口でトルクが不足してしまいますが、ここはむしろ前向きに「その分シフトチェンジのしがいがある」とでも考えましょう。誰が乗っても速く走れてしまうタイプのスポーツカーやハイパフォーマンスカーが多い中で、ちゃんと乗らないと速く走れないのはむしろドライバーを鍛えてくれます。
ロータリーエンジン最大のメリットは、小型・軽量であることです。そのお陰で重量物であるエンジンを車体中央部にかなり寄せて配置できます。回頭性の良さはエンジンの特性によって生み出されているわけですね。
高速道路
ワインディングへの移動のために高速道路も利用しました。
車体が古く、足回りもかなり痛んでいたにも関わらず、高速道路は結構ラクに走れました。ただ、欧州実用車のようなどっしりと安定した感じとはやや違うように感じました。足回りもかなり固い(というかたぶんアブソーバー死んでる)ですし、着座位置も実用車に比べれば随分低く、回さないとパワーが足りなくもなります。定速で走行するには何も考えなくても安定していますが、トラックなんかを抜かそうとぐいっと加速したいときには相応の気合いを入れて走ることになります。ぼーっとしてても右足を踏み込むだけでぐぐっと速度が上がる安楽なクルマとは違いますね。
振動&サウンド
ロータリーエンジンのサウンドは、フィーリングと合わせて「モーターのよう」と呼ばれるように「キュイーーン」という独特なサウンドです。ターボが無い分こもった音にもならないため透き通った綺麗な音です。音量も大きすぎないので迫力はありませんが、ロータリーらしいサウンドには惚れ惚れしてしまいました。
まとめ
概して、完全にスポーツカーでした!