ミニクーパーとフィアット500を徹底比較!
「おしゃれ輸入車」「リバイバル」「コンパクト」など、似たようなポジションで比較されやすい「ミニ・クーパー」と「フィアット・500」。
個人的にも気になって見に行ったり試乗したりしているので、詳細に比較してみました。
目次
おしゃれリバイバルカー
日本で購入できる「おしゃれリバイバルカー」は3車種です。
- BMWミニ・クーパー
- フィアット・500/500C/500S
- フォルクスワーゲン・ザ・ビートル
このうち、VWビートルはベースである同社ゴルフより大きい車体で小さくする気はまるで無さそうなのでライバルとは少し違います。そもそも元になった「フォルクスワーゲン・タイプ1」(通称ビートル)自体が全長4m超えの車体でしたしね。
なので「リバイバル」「おしゃれ」「コンパクト」というキーワードではフィアット500が直接のライバルになるでしょう。エンジングレードが複数あったり、クロスオーバー仕様があったり(ミニクロスオーバー/フィアット500X)、ハイパフォーマンスモデルがあったり(ジョンクーパーワークス/アバルト500)というあたりも共通していますね。ざっくり言えばミニの手法をフィアットがパクってるわけです。
スペック比較
ミニ・クーパーからはメインストリームとなる「クーパー」「クーパーS」、フィアット・500からは「1.2」「TwinAir」を選びました。
ミニには他に廉価仕様の「ONE」やハイパフォーマンスの「ジョンクーパーワークス」、500にはアバルトという別ブランドからハイパフォーマンス版の「アバルト・500」があります。「ONE」は車体に対して非力ですし、ハイパフォーマンス仕様は指名買いでしょうからここでは取り上げません。
※ 3ドア・AT車。1万円以下切り上げ。括弧内はミニクーパー比。
サイズは明らかに500の方が小さい
まずは外形サイズ。日本でよく見かける車として、国産コンパクトカーの代表選手「ホンダ・フィット」と、軽自動車なのにやたら背が高い「ダイハツ・タント」を取り上げました。
ミニクーパーの全長(3,835~3,860mm)はフィットと10cmも変わりませんし、全幅はフィット(5ナンバー)より大きい3ナンバーサイズ。全高こそやや低いもののほぼ国産コンパクトカー並みのサイズがあります。
一方、フィアット・500の全長は3,545mmと、日本の軽自動車(3,400mm以下)よりやや長い程度。幅はやや広めですが、それでも余裕で5ナンバー規格(1,700mm以下)に収まる1,625mm。ルーフ後端がなだらかに下がっていくので、見た目的にも小さく見えます。軽自動車でもタントのように箱型で背が高いとかなり大きく見えるので、500は軽自動車より小柄に見えるかもしれません。
世代を追ってどんどんサイズを拡大しているミニクーパーに対して、フィアット・500は新型でもサイズがまったく同じなので安心ですね。
パワートレイン,走り
エンジンが4種類あれば、走りは四者四様です。4種すべて試乗したので順に見ていきましょう。
ミニ 4気筒 2.0L ターボ:滑らかで普通に速い
1,270kgの車体に2.0Lターボなので結構ハイパワーです。街乗りから高速道路、ワインディングなど普通に走る分にはパワーに不満が出ることはまず無いでしょう。公道でこのパワーは余分です。サーキットやジムカーナで攻めるなら別ですが、公道で普通に走るならパワーの点ではクーパーの1.5Lターボでなんら問題無いと思います。
エンジンのフィーリングは滑らかで快適です。踏めばしっかり加速しますが、アクセルの反応は過敏では無いのでそんなに気を遣う必要はありません。最大出力に対してやや穏やか過ぎる気もほどですね。排気量が大きくターボなので残念ながら実用燃費は期待できないでしょうね。
ミニ 3気筒 1.5L ターボ:パワーに不満は無いが、3気筒で低品質
1,200kgの車体に1.5Lターボエンジンなのでパワー的には十分です。街乗りはもちろん、高速域や坂道での加速でも不満が出ることはほとんど無いでしょう。ターボは昨今のダウンサイジングターボの流れに沿った低回転からかかるタイプなので、ターボラグもあまり感じることはありません。
ただ問題は3気筒であること。アイドリング~低速での振動はかなり大きく、正直不快なレベルです。音も少気筒らしい低く粒の揃わない音なのであまり気持ちよくありません。回転数を上げればいくぶんマシにはなるものの、エンジンの質という点では4気筒のクーパーSに大きく劣ります。日本の軽自動車はすべて3気筒エンジンですが、音も振動も日本の軽の方がだいぶマシです。
私が買うならパワーではなく気筒数の点でクーパーSを選ぶことになるでしょうね。
500 4気筒 1.2L 自然吸気:パンチが無く高速は苦手
車重990kgに69馬力の自然吸気エンジンなので、感覚的には1.0L~1.3Lの国産コンパクトカーに近い感じです。普通に走ってくれます。あくまで普通に。
急加速や高速域加速では期待よりも加速してくれません。ノンターボ軽自動車のように全然前に進まない感じになることはありませんが、パワーに余裕は無いのでパンチの効いた加速は望めません。
走りの楽しさではなくデザインで500を選ぶなら1.2でいいでしょう。ただし高速道路は諦めた方が無難だと思います。
500 2気筒 0.8L ターボ:旧車の雰囲気を楽しめる人専用
2気筒エンジンなので、ミニの3気筒よりさらに音も振動も増えますが、このエンジンは「低品質」というより「面白い」のレベルに昇華しています。
ばふばふ唸るかエンジンがブルブル震えながら走りますが、超小排気量ターボは意外なほどしっかり加速してくれます。車体が1t超えとは思えないほどの軽快な加速感は昔のコンパクトカーを想起させてくれます。
ハッキリ言って上質さは皆無です。走りも音も振動も良い意味で荒々しく現代のクルマとは思えません。内外装だけでなく走りにも旧車っぽさをさ出すには最適です。
トランスミッション
日本で圧倒的多数を占めるATに絞って比較します。ミニとチンクでATの構造がまったく異なるので比較のしがいがありますし。
まずはATの特徴から。
種類 | 利点 | 欠点 | 採用車種 |
---|---|---|---|
トルコン式 | 発進がスムーズ 変速がスムーズ クリープ現象あり |
燃費がMTより悪い ダイレクト感が薄い |
大半のAT車 |
シングル クラッチ式 |
燃費はMT並み ダイレクト感はMT並み |
発進がややぎこちない 変速がぎこちない クリープ現象が無い*1 |
フィアット500 アルファロメオ159 など |
デュアル クラッチ式 |
燃費はMT並み ダイレクト感はMT並み 変速がスムーズかつ高速 |
発進がややぎこちない クリープ現象が無い*1 コストが嵩む |
VW,アウディ,ポルシェ の多くの車種 フェラーリ458イタリア など |
*1 クリープ現象は擬似的に再現しているメーカーも多い。
最近はシングルクラッがほぼ淘汰されて、ほとんどがトルコン式、欧州車を中心にデュアルクラッチが普及しつつある、という状況です。ちなみに無段階変速のCVTは一般的にはトルコン式に含まれます。
ミニはトルコン式の6AT
ミニはトルコン式6段ATを採用しています。
トランスミッションの出来自体はなかなか良いです。192馬力のクーパーSでフルアクセルしても滑り感はあまりありません。ギアチェンジのショックはトルコン式にしてはやや大きめです。クーパーSはハイパワーなのでトルクの途切れが余計に気になります。
欧州車の流れやBMWのラインナップからすると、今モデル中のハイパフォーマンスモデルか次期モデルではデュアルクラッチが採用されることでしょう。
変速タイミングは現代の車らしいセッティングです。通常のDレンジは燃費重視モードで、どんどん上のギアに変えていってしまいます。シフトダウンも消極的なので、低速トルクが大きいとはいっても走りにくいです。
セレクトレバーをDから左に倒すと自動変速Sモードになって、ギアチェンジのタイミングが走りやすいレベルになります。この状態で前後に倒すとマニュアルモードでギアチェンジできます。
Dレンジはエコモード、Sレンジがノーマルモードだと理解しましょう。
フィアット500はシングルクラッチ式の5AT
フィアット500は「デュアロジック」という名のシングルクラッチ式トランスミッションを採用しています。
シングルクラッチ式は構造MTなので、ダイレクト感は良いですが、発進・変速がぎこちなく、クリープ現象が無いということになります。
デュアロジックでは擬似的なクリープ現象もないのでブレーキを離しても発進せず、アクセルを踏み込むと自動的にクラッチが繋がって発進します。ごく低速でもアクセルのみでコントロールする必要があるので、駐車や見通しの悪い交差点での発進はやりにくいです。クラッチペダルでコントロールできるMTの方が操作は容易です。
スムーズに走らせるにはコツの習得が必須ですね。
まとめ
- リバイバルカー雰囲気を本気で楽しみたいなら500のTwinAirモデル。
- スポーティ+やや高級を楽しみたいならミニクーパーS
- 見た目だけなら500の1.2かミニクーパー