シリーズハイブリッドとレンジエクステンダーEVの違いは?
2017/02/16
日産・ノートe-POWERの発売で注目を集めるシリーズハイブリッド。内部技術はほとんどEVのようです。じゃあEVにエンジンを載せたレンジエクステンダーEVと何が違うの?
シリーズハイブリッドとレンジエクステンダーEVの違いをまとめました。
シリーズハイブリッドを採用した「ノートe-POWER」の試乗レビューはこちら↓
目次
構造はほぼ同じ
シリーズハイブリッド も レンジエクステンダーEV も、基本的な構造は同一です。
どちらも走行はバッテリーとモーターで行い、エンジンの駆動力は走行には使われません。エンジンの力は、発電機を動かしてバッテリーを充電するためだけに使われます。
言い換えれば分かりやすい
「ハイブリッド」だとか「レンジエクステンダー」とか分かりにくい言葉だからいけないんです。言い換えましょう。
普通の呼び方 | 分かりやすい呼び方 |
---|---|
シリーズハイブリッド | エンジン発電式EV |
レンジエクステンダーEV | エンジン発電可能EV |
違いのキモ
重要な所は、何充電がメインかということです。
モーターで走行するためには電気が必要です。その電気はバッテリーに蓄えられています。では何で充電するのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
シリーズハイブリッド
シリーズハイブリッドでの充電のメインは、エンジンによる発電です。「エンジン発電式EV」とも言えます。
シリーズハイブリッド車には発電専用のエンジンが搭載されており、発電機を回します。得られた電力はバッテリーを介してモーターに供給され、モーターの駆動力で走行します。つまり間接的ではありますが、エンジンが走行に必要ということです。
シリーズハイブリッド車と他のハイブリッド車の比較は以下の記事をご覧ください。
エンジンは大パワー、バッテリーは小容量
シリーズハイブリッド車にはエンジンとモーターの間にバッテリーが挟まる形になります。普段からエンジンを動かすことを前提に設計されているので、巨大なバッテリーを積む必要はありません。
一方エンジンはモーターの出力と同レベルのものが要求されます。10馬力のエンジンで得られる電力で100馬力のモーターを動かしたら、高負荷走行ではあっという間にバッテリーが尽きてしまいます。
実際に日産・ノートe-POWERでは、通常のハイブリッド車並みのバッテリーと、通常のガソリンエンジン車並み(ノートと同一)のエンジンを搭載しています。
制御や設計次第ではエンジンを止めてEV走行をできるようにもできますが、バッテリーが小さいのでEV並みの航続距離にはなりません。
外部充電設備は必須ではない
シリーズハイブリッド車では外部充電設備の搭載が必須ではありません。エンジン発電がメインなので、基本的には充電不要です。ガソリンエンジン車と同様にガソリンを補給して走行します。日産・ノート e-POWERにも外部充電設備はありません。
外部充電設備を搭載して「プラグインハイブリッド」(充電可能ハイブリッド車)として販売することもできますが、あくまで付加的な設備です。
ベースはガソリンエンジン車
日産・ノート e-POWERがそうであるように、ガソリンエンジン車をベースに作る方が容易です。
モーターやバッテリーは搭載場所が比較的自由ですが、100馬力レベルのエンジンの搭載場所は限られています。EV車に大きなエンジンを積むよりも、ガソリンエンジン車のどこかのスペースにバッテリーとモーターを搭載する方が簡単だからです。
レンジエクステンダーEV
レンジエクステンダーEVでの充電のメインは、外部充電です。「エンジン発電可能EV」とも言えます。
基本は家庭の電源や充電スタンドを利用してのバッテリー充電です。日常走行でエンジンが使われることはなく、普段は純粋なEVとして使います。
航続距離を稼ぎたい場合やバッテリー残量が少ないときに限り、ガソリンエンジンでの発電を行います。エンジンの利用は補助的/緊急用程度を想定しています。
バッテリーは大容量、エンジンは小パワー
基本はEVとして走行するので、大容量のバッテリーを積む必要があります。バッテリー走行で100~200km程度の航続距離が無いと競争力のある車になりません。
EV用の高性能バッテリーは非常に高価なので、価格はどうしても高くなります。
一方エンジンは補助的設備でしかないので、小さなエンジンでも事足ります。例えば100馬力のモーターに10馬力のエンジンだとしても、航続距離が150km→200kmになるなら意味があるということです。現実の走行で高負荷が持続することは少ないので、充電時はエンジンをフル回転(10馬力で充電)すればそれも可能だということです。(停車中もエンジンが唸っていたらうるさいですけどね)
普段エンジンを使わないので、「数ヶ月エンジンを動かしてない」なんてことを起こりえます。長期間エンジンを動かさなくても故障しないように、オイル下がりなどへの特別な対策が必要になります。
外部充電設備が必須
レンジエクステンダーEVの基本は外部充電での走行なので、外部充電設備は必須です。外部充電設備が無ければEVとは呼べないということです。
ベースはEV
搭載するエンジンは小さくてよく、巨大なバッテリーを搭載する必要があるので、ベース車両はEVになることが多いです。
BMW・i3のように、EVとレンジエクステンダーEVで同時開発して併売するということも可能です。エンジンはEVのオプション設備ということですね。
まとめ
別の言葉ですから、ちゃんと分類すれば違いがありますね。日産・ノートe-POWERはレンジエクステンダーEVではなくシリーズハイブリッド車ということが分かります。
しかし自動車業界は分かりにくい言葉を次々生み出しますね。一般消費者には「なんかスゴそう」とだけ伝われば十分なのでしょうか。スズキなんて同じ技術を言い換えていますしね。
複雑な技術を言葉で伝えるのは難しいものですが、高い買い物なので分かりやすく伝えてほしいものです。
シリーズハイブリッドを採用した「ノートe-POWER」の試乗レビューはこちら↓