VWが新型4WDワゴン「ゴルフオールトラック」発売!比較したらスバルに勝てそうもありません
2017/02/14
先日新型パサートを発売したばかりのフォルクスワーゲンが、今度はクロスオーバーステーションワゴン「ゴルフ オールトラック」を発売しました。
好評なゴルフをクロスオーバー風に仕立て、輸入車4WD最安を標榜するオールトラック、その実力やいかに?
新型パサートの試乗記もご覧くださいね → VW新型パサートレビュー!ゴルフやアテンザに勝てる気がしない旗艦セダン
ゴルフ オールトラックってどんな車?
ゴルフオールトラックの成り立ちは以下の通り。
Cセグメント界のベンチマーク、名車「ゴルフ」。
後ろを引き延ばしてステーションワゴンに仕立てた「ゴルフ ヴァリアント」。
4輪駆動にしてクロスオーバー風の装飾を施した「ゴルフ オールトラック」。
つまり、あくまでゴルフをベースに発展した車ということです。現行の7代目ゴルフは非常に完成度が高い上にコストパフォーマンスも良く、輸入車なのに日本カーオブザイヤーを獲ってしまったほど。そんな車がベースですから期待できますね。
ちなみにDSG(デュアルクラッチトランスミッション)が7速→6速に劣化したなんてこともあったりします。要注意。
※8/18追記。ご指摘いただきました。乾式7速DSG→湿式6速DSGなので劣化とは限りませんね。元々湿式だったDSGをコストダウンで乾式にしたものが標準のゴルフに採用されています(外部リンク)。リコールが多発しているのも乾式ですし、許容トルクに余裕を持たせるためにも湿式を採用したのでしょう。乾式7速の許容トルクは250Nmで、オールトラックは28.6kgm=280Nmなのでそもそも乾式7速は採用できませんね……。高トルクにも耐えられる湿式7速はコスト的に採用できないのでしょう。
ライバルとの比較
4輪駆動の輸入車として最安を標榜しているようですが、実際には日本車と戦わなければなりません。日本ではスバルの4輪駆動が圧倒的な信頼を得ているので、サイズ的に近い「XV」を選びました。他の日本車ではスカイアクティブと魂動デザインで好評な中型SUVのマツダ・CX-5のクリーンディーゼルモデルを、輸入車からはミニのクロスオーバーモデルを選びました。
アウディとかボルボにも同クラス4WDがありますが、価格が高すぎるので今回は外しました。A3スポーツバックの1.8Lクアトロで429万円~です。
ゴルフ オールトラックは事実上1グレード設定。いくつか装備が増えたものを「Upgrade Package」として20万円UPにしています。
スバルの安さが際立ちますねぇ。スバルはOEM車両とスポーツカーのBRZを除く全車に4WD(スバル的にはAWD)を設定していて、価格を下げやすいというのも効いているかもしれません。むしろ2WDが選べるのがインプレッサだけという状況。このXVも4WDしかありません。選んだグレードは最上位グレード。最下位グレードの「2.0i」なら226万円~です。
ちなみにマツダ・CX-5もガソリンエンジンなら4WDで268万円~です。でもCX-5はディーゼルを選べるのが有利なポイント。42.8kgmという強大なトルクで走れます。ただ、車体がやや重いことと、全高155cm超えで立体駐車場不可というのがネック。実際に見ると結構大柄で迫力があります。アグレッシブなデザインも高ポイント。
ミニは車体が短いので広さでは他の3車種に劣ります。デザインや雰囲気で選ぶものでしょうね。価格だけならオールトラックに勝てませんし、パワーどころかディーゼルなのにトルクすら負ける始末。ただこのサイズの輸入4WDはほとんど無いので、コンパクトさに魅力を感じる人にはオススメします。
価格設定
コストパフォーマンスが高いと言った「ゴルフ」は1.2Lターボで264万円~です。オールトラックより80万円も安い。でも積載能力は落ちます。
同じレベルの積載能力なら、「ゴルフ ヴァリアント」が1.2Lターボで288万円~。これでも60万円安い。もちろん4WDではありませんが。
4WDにするだけで60万円UPなんておかしな話です。マツダ・CX-5は同一グレードで4WDにすると23万円UPです。60万円は高すぎます。
つまりフォルクスワーゲンの戦略は「4WDを買う人は高くても選んでくれるだろうから、クロスオーバー風の装備を付けてさらに高く売ろう」とも読み取れます。
トップエンドモデルが4WDという考え方を避けたかった
コンフォートラインの上のグレードとして、ハイラインというラグジュアリー系と、4WDという機能の2つの選択肢を設けて、どちらもほぼ同じ価格にした。それによってゴルフの価格帯がある一定の範囲内に納まっているようにみえる。これが大事だと我々は思った(VWジャパン・庄司社長)
たしかに、「ゴルフ ヴァリアント」の上位グレード「ハイライン」は1.4Lターボで347万円~。同額です。
まとめ
立ち位置が不明瞭だなぁと感じざるを得ません。本気でクロスオーバーならCX-5くらい車高を上げた方が見栄えがしますし、単に4WDにしたいだけなら別名と別デザインを与えずに安くした方が喜ばれます。
疑問なのはなぜ1.8Lターボにしたのかということ。4WDにするだけで車重がそんなに増えるとも思えないので、「ゴルフ ヴァリアント」の1.4Lターボで良かったのではないでしょうか。Dセグメントのパサートは1.4Lターボだけなのにですよ? 不思議です。
1.4Lターボでも2.0L自然吸気並みの走りができます。装備をある程度減らして300万円切れば……いやそれでもスバルに勝てませんね。結局スバルと の直接対決を避けて、ややプレミアムよりで戦おうってことですね。本気でプレミアムだとアウディなんかに勝てないので「やや」です。
「ドイツ車」という価値があっても、100万円近くの差額を払ってもらうのは難しいでしょう。しかも日本で「フォルクスワーゲンの4WD」と聞いても何も浮かびませんが、「スバルの4WD」は歴史と信頼が築かれています。
ゴルフは素晴らしい車なんですが、オールトラックにはその良さが活かしきれてないなぁというのが正直な感想です。
新型パサートの試乗記もご覧くださいね → VW新型パサートレビュー!ゴルフやアテンザに勝てる気がしない旗艦セダン